企業の方向けに、必要な最低限の労働法の知識、コンパクトに労働問題解決のノウハウをお伝えします。
労務管理の基本は、まず、当該雇用契約が、①期間の定めのない無期雇用契約か、②期間の定めのある有期雇用契約のどちらにあたるのか、を確認することから始まります。
この点、正社員や契約社員、嘱託社員等の言葉が使用されることがあります。正社員は、期間の定めのない契約であり、契約社員や嘱託社員は、期間の定めのある契約であるとされますが、正社員、契約社員、嘱託社員は、正式な法律用語ではありません。
また、一般に、正社員、契約社員・嘱託社員は、退職金や賞与の有無等が異なるとされていますが、法は、いわゆる正社員に退職金や賞与の支給を義務づけているわけではなく、契約社員や嘱託社員に退職金や賞与の支給を行うことも可能です。
雇用契約を大きく分けるのは、退職金や賞与の有無ではなく、あくまでも期間の定めの有無なのです。なお、正社員と契約社員に関し、誤解しやすい事項についてはこの頁をご覧下さい。
それでは、期間の定めの有無で何が違ってくるのでしょうか。主に雇用契約の終了の場面で異なってきます。
すなわち、期間の定めがある場合、当事者双方が期間を設定している以上、期間中に雇用契約が終了することは原則として想定されていません。
一方で、期間の定めのない場合には、労働者を永続的に拘束することは不都合なので、労働者側からの契約の終了の自由(一方的解約、辞職の自由)が認められることとなります。
会社側からの契約の終了(解雇)が困難であることは同様です。
期間の定めがある場合には労働者側に原則として辞職の自由がないことを把握していないケースが散見されます。
今一度、就業規則を見直してみて、いわゆる契約社員に辞職の自由を認めていないか(「退職を申し出る場合には1ヶ月前に行う必要がある」等と規定されていることが多い)、それで不都合がないか確認してみて下さい。もちろん、会社の裁量で、契約社員に辞職の自由を認める扱い・制度設計とすることは可能です。
また、期間の定めがある場合であり、会社が辞職の自由を認める規定をおいていなかったとしても、会社が契約社員の辞職を認めて差し支えなければ、認めることは当然可能となります。これは、合意退職となります。