正社員と契約社員で誤解しがちなこと

会社目線の労働コラム

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正社員と契約社員で誤解しがちなこと

正社員と契約社員

正社員と契約社員とは、法律用語ではありませんが、一般に、正社員は雇用契約が期間の定めのない場合、契約社員期間の定めのある場合をいいます。

ところが、正社員と契約社員では、期間の定めの有無だけでなく、賞与の有無や退職金の有無が異なる場合が多いため、誤解が生じやすくなっています。

 

よくある勘違い~正社員と契約社員~

以下、当職がよく経験する、会社の方がよくしている勘違いの例をあげてみます。

【勘違い1~賞与・退職金~】

正社員は、賞与・退職金が支給されるが、契約社員は、賞与・退職金が支給されない(誤)

 賞与・退職金の有無は、就業規則や雇用契約の内容であり、正社員であっても、退職金・賞与が支給されない場合はあるし、契約社員に賞与・退職金を支給することも可能です(正)。

【勘違い2~有給休暇~】

約社員には有給休暇を支給しなくてもよい(誤)

→ 契約社員であっても、当初契約から6ヶ月経過しその間8割以上出席したた場合には、正社員と同様、有給休暇が発生します。但し、週の所定日数・労働時間が短い場合には、支給日数が少なくなります。すなわち、有給休暇の有無・程度は、期間の定めの有無ではなく、当初契約からの期間の経過の程度、週の所定労働日数・労働時間によって決まってくるのです(正)。

【勘違い3~社会保険・労働保険の加入義務~】

契約社員については、社会保険(健康保険、厚生労働年金)、労働保険(雇用保険、労働災保険)への加入義務がない(誤)

 → 契約社員であっても、社会保険、労働保険の加入義務はあります。なお、加入が免除される場合は以下のとおりです(正)。

  • 健康保険・厚生労働年金:1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の分の4分の3未満である場合
  • 雇用保険:1週間の所定労働時間が20時間未満である場合、もしくは、雇用の見込みが31日未満の人を雇い入れた場合
  • 労働災害保険:免除される場合はありません

【勘違い4~解雇~】

契約社員は簡単に辞めさせることができる(誤)

→ 会社からの契約期間中の解雇は、「やむを得ない事由」が必要となり、一般に、正社員より難しいとされています(正)。

【 勘違い5~辞職の自由~】   

契約社員にも正社員と同様に辞職(任意退職)の自由(辞職の申し入れから一定期間経過後に退職の効果が発生する)が認められる(誤)

→ 正社員には辞職(任意退職)の自由はありますが、契約社員は、「やむを得ない事由」なき限り、もしくは、就業規則や雇用契約書にこれを認める記載があるか、会社の同意を得ない限り、契約期間途中で会社を辞めることはできません。辞めてしまった場合には債務不履行の問題となります(正)。

【勘違い6~転勤・残業~】

契約社員に転勤や残業を命じることはできない(誤)

→ 雇用契約の内容によっては、契約社員に、転勤や残業を命じることはできます。しかしながら、正社員と同じ業務をさせ同じように転勤や残業を命じるのであれば、給与等の条件は、正社員と同等にすることを考えなければなりません(正)。

【勘違い7~育児休業~】

  契約社員には育児休業を認める必要がない(誤)

→ 契約社員であっても、以下の場合には、育児休業を認める必要があります(正)。
① 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
② 子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
③子の2歳の誕生日の前々日までに、労働契約期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと

【勘違い8~休職~】

  正社員には休職が認められるが、契約社員には休職を認められない(誤)

→ 休職の可否、内容(有給か無給か)は、雇用契約の内容の問題なので、契約期間の有無とは関係がありません。但し、一般的には、正社員には休職制度を設け、契約社員には休職制度を設けない会社が多いものと思われます(正)。

実務上の留意点~異なるのは契約終了の場面~

正社員と契約社員について、法的に異なる取扱いとなるのは、大きくいえば、雇用契約の終了(①期間の定めによる終了の有無、②労働者の辞職の自由の有無)の場面だけです。

有給休暇の支給や社会保険・労働保険の加入育児休業の付与は、一定の条件を満たす場合には、期間の定めの有無に関わらず、会社の義務となります。

賞与・退職金の有無、休職制度の有無は、会社の制度設計の問題にすぎないのです。

このような観点から就業規則を見直してみてはいかがでしょうか。

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