企業の方向けに、必要な最低限の労働法の知識、コンパクトに労働問題解決のノウハウをお伝えします。
「辞めてもらいたい社員がいるんだけど、解雇難しいんですよ」「退職勧奨しても駄目なんですか?」「えっ、退職勧奨ってしてもいいんですか?」というやりとりがなされることがあります。退職勧奨は労働者保護の観点から許されない、このように誤解している会社関係者がたまにいます。
退職勧奨は、従業員に対して退職を促すための事実上の行為でしかありません。従業員はこれを特段理由を示さずとも拒絶することができ、退職するか否かの決定権は従業員に残されており、退職勧奨自体で何らかの法的な効力が発生するわけではありません。
したがって、使用者による退職勧奨は原則として自由です。
退職勧奨は、それ自体で直接法的な効力が発生しないとしても、合意退職を導くためのステップの一つです。
そして、合意退職は、相手方の同意が必要とはいえ、解雇との比較において実務上極めて重要な意味を持ちます。
したがって、個人的には、実務上は、解雇をする前に、退職勧奨をして合意退職が成立する余地がないか検討した方がよいと考えています。
このように、実務的には、解雇より退職勧奨により退職の合意を成立させることが望ましいのですが、そのためには、退職勧奨を行うことは使用者の自由とはいえ、①退職勧奨が社会的に相当な手段方法によって行われ強要にならないこと(退職の同意が自由意思によること)、②退職の合意が有効に成立していると証拠上もいえることが必要です。
それでは、①退職勧奨が強要にならず、合法であるといえるためには、どのような点に注意たらよいでしょうか(②退職の合意が争われないようにするための実務上の留意点については次回ご説明します)。筆者は以下のような点が重要であると考えています(個人的な見解です。また、実際にはケースバイケースです。)。
【退職勧奨を行う際の留意事項】
以上のとおり、