退職の類型(雇用契約の終了原因)

会社目線の労働コラム

企業の方向けに、必要な最低限の労働法の知識、コンパクトに労働問題解決のノウハウをお伝えします。

退職の類型(雇用契約の終了の原因)

退職の類型(雇用契約終了の原因)を体系的に理解する

企業の法務や人事の方と話していて思うことの一つに、退職の類型(雇用契約終了の原因)の全体像を把握していれば、従業員の退職の対応の方針も決定しやすくなるのに、ということがあります。

また、はじめて労務管理を行う法務や人事の方最初に学んで頂きたいことの一つが退職にまつわること(もう一つは時間管理)です。

そこで、本頁では、退職の類型、雇用契約の終了の原因について、ざっくりと解説します。

退職の類型(雇用契約の終了の原因)

雇用契約終了の原因には、大きく分けて、以下のようなものがあります。

  1. 合意退職労使双方の合意に基づく雇用契約の終了)
  2. 解雇使用者による一方的な雇用契約の終了)
  3. 辞職労働者による一方的な雇用契約の解約)
  4. 定年
  5. 期間の定めのある契約における期間の終了

なお、そのほかに、
 6.  傷病休職期間満了後において復職がなされない場合の当然退職
   7.  行方不明の場合の就業規則等に基づく一定期間経過後の当然退職
がありますが、ここでは、わかりやすくご説明するために省きます。

期間の定めの有無と雇用契約終了の原因

雇用契約終了の原因やその内容は、期間の定めの有無(いわゆる正社員か契約社員か)で異なってきます

期間の定めのない場合(正社員)の場合に固有なものは、3.辞職(労働者による一方的解約)・4.定年であり、期間の定めのある場合(契約社員)に固有なものは、5.期間の終了です。

以下、期間の定めのある場合とない場合に分け、ご説明します。

期間の定めのない無期雇用契約の場合(正社員)

期間の定めのない無期雇用契約は、期間の定めのある有期雇用契約と異なり、一定期間経過による雇用契約の終了はありませんが、どのような場合に終了するのでしょうか。

【双方の同意による終了】

まず、雇用契約は合意によって成立するものですから、その終了も労使双方の合意によって行うことができます。これが1.合意退職です。しかしながら、辞める辞めないは、言った言わないの論争となることがあり、実務上合意の成否が争われることはよくあります。

【片方のみが終了させたい場合~解雇と辞職~】

それでは、使用者・労働者の片方だけが、雇用契約を終了させたいと思ったときは、どうなるのでしょうか。

まず、使用者による一方的な雇用契約の終了は、いわゆる2.解雇の問題です。労働者保護の見地から、解雇はよほどの例外的事情がないとできません(解雇権濫用法理)。

反対に、労働者がいつまでも契約に拘束され労務提供義務を負うということは、不都合ですから、労働者が「会社を辞める」との意思を表示し、法が定める一定の期間(民法627条)が経過すれば、当然に雇用契約は終了します。これが3.辞職(労働者による一方的雇用契約の解約)です。会社の同意は不要ですし、会社に業務の引き継ぎの必要などの事情があるとしても、法が定める一定期間が経過すれば当然に終了します。

使用者は極めて限定的な解雇原因が認められない限り、一方的に従業員を辞めさせられない一方、労働者は自由に会社を辞めることができるのです。

【定年】

そして、年齢による制約もありますので、60歳以上の従業員には定年を設けることができます。定年を設けるか設けないかは自由です。また、定年を設けるとしても、定年を60歳から65歳の間に設けるときは、会社には65歳までの継続雇用の義務があります。

期間の定めのある有期雇用契約の場合(契約社員)

【期間満了による終了】
期間の定めのある有期雇用契約の場合、原則的な契約終了原因は、5.期間の終了です。なお、期間の終了には、いわゆる雇い止めや雇用後5年を経過した場合には無期転換ルールの問題があります。

【期間途中の契約の終了】
それでは、期間途中に契約を終了させることはできないのでしょうか。

まず、雇用契約は当事者の合意によって成立したものである以上、合意により終了させることはできます。1.合意退職であり、この問題状況は期間の定めのない場合(正社員)と同様です。

それでは、使用者・労働者の一方的都合で期間途中で雇用契約を終了させることはできるのでしょうか。民法628条は、期間途中の雇用契約は「やむを得ない事由」がある時のみ終了させることができると定めています。また、民法628条は、「やむを得ない」事由があり雇用契約を終了させられるとしてもこれが当事者の過失によって生じた場合には相手方に損害賠償義務を負うと定めています。

使用者にとっての「やむを得ない事由」は期間の定めのない契約よりも限定的に解されますので、正社員の解雇権濫用法理に基づく解雇事由より厳しい事由が必要であるとされているので、一方的に、辞めさせることは非常に困難です。

労働者の場合には、何が「やむを得ない事由」といえるのかは争いがあるところですが、健康上の理由はともかくとして、単に他によい職場があったというだけでは、期間途中で一方的に会社を辞めることはできません。無理矢理辞めてしまった場合には、労務提供義務の不履行となります。なお、会社によっては就業規則や雇用契約書上契約社員にも辞職の自由を認めていることも多く(「辞職するには退職の1ヶ月前に届け出ないといけない」等と規定)、その場合には、規則・契約上の手続きをふめば、労働者は会社を辞めることができますし、会社はこれを止めることはできません。また、1年を超える有期雇用契約を締結した場合(更新の結果1年を超えた場合は含みません)には、1年を超えた日から、労働者はいつでも自由に会社を辞めることができます(労働基準法137条)。

実務上の留意点

http://www.i-k-suzuki-law.jp/14511091815800退職(雇用契約の終了)が問題となるときは、まず、①当該従業員の雇用契約の期間の定めの有無を確認してください。そして、②どの類型・終了原因が問題となっているかをみて、類型・終了原因毎に、③法が定める要件、④就業規則や個別の雇用契約書の内容(法が定めるよりも従業員に有利な内容が定められていないか)を確認する作業が必要となります。

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